嵐山に建つホテルのリノベーションである。
オーナーからの要望は地域の活性化につながるような場とすることだった。阪急嵐山駅か
ら徒歩3分程度の場所に位置しており、渡月橋からもほど近く嵐山観光に便利な場所にあ
る建物は、かつて阪急電鉄の保養所として使われていた。この場所を協働設計者である
DAY inc.が運営をする事となり、共に企画と設計を進めることとなった。
保養所をホテルとして改修するだけでは外から訪れた人向けの施設となり、地域に閉じた
場所になってしまうため、宿泊客以外にも地元の方や観光客が交流できる場所として、街
に開かれたレストランも新たに計画した。
竣工図を元に事務所で設計を行った後に解体を行い、解体後、さらに数ヶ月の間現地で設
計を行った。現地では、建物の上下の重なりや混構造での異素材の取り合いなど、竣工図か
らも読み解きづらい内容を現場で痕跡を発掘するように読み解きながら、図面に落とし込
み新しい表層を与えていくように進めていった。
ホテルの客室は、しつらえの考え方は統一させながらも部屋とする部分の面積や痕跡も異
なる事から10室それぞれが異なる表情になっている。その場所の個性を読み解いた事で、
大きな庭に面した半露天風呂のある部屋、木漏れ日の入る大きな縁側がある部屋、大きな
梁がある天井が高い部屋、新旧の梁が交差する秘密基地のような部屋等様々な客室がうま
れた。
レストランは宿泊客だけで無く地域に対しても開く様に計画している。嵐山という観光地
の特性上17時には殆どの店が閉まってしまい、遊びに来た観光客は夕方にはこの地を離れ
ざるをえないという点や、地元住民が食事をとれる店が少ないという事からも宿泊客以外
も利用できるように計画した。
敷地の前は阪急嵐山駅から渡月橋に向かう道があるにも関わらず、店等があまり無く人通
りが少なかったが、このホテルとレストランができた事で人の流れが変わり、周辺を含め
て今後より一層この辺りが盛り上がることを期待している。
近くにお越しの際はぜひお立ち寄り下さい
嵐山邸宅MAMA(ホテル)
儘(レストラン)
https://mama-arashiyama.jp/
所在地 / 京都市西京区嵐山
用途 / ホテル+レストラン
構造 / 混構造(RC・木造 一部鉄骨造)
規模 / 地上2階
敷地面積 / 1,482㎡
延床面積 / 802㎡
設計 / DAY
岸本姫野建築設計事務所
コンサルタント / ザッツオールライト
カーテン / fabricscape
家具 / 片井意匠 ・ ARIA ・ ARC
和紙 / Wataru Hatano
提灯 / Kojima Shouten
造園 / IRODORIMIDORI ・ enen
ソファ / Murakami Isu ・ OTUS
写真 / Yuna Yagi
嵐山の宿
儘・嵐山邸宅MAMA